【医師執筆】高血圧と勃起不全(ED)について
「バイアグラは心臓に悪いと聞いたことあるけど、血圧高くても飲んで平気?」
「血圧の薬を飲んでるけど、バイアグラと一緒に飲んでも大丈夫?」
こんな疑問はありませんか?
基本的には、高血圧があってもバイアグラは安全に使用できます。
しかし、利尿薬やベータ遮断薬といった血圧の薬はEDの原因になる場合があります。
一方、ARBといった血圧の薬は、EDの改善効果があります。
私はEDクリニックの院長ですが、高血圧の方も来院され、日々アドバイスしています。
降圧薬の種類を変更しただけで、EDが改善した経験があります。
高血圧とEDの関係を理解して、良好に血圧をコントロールしつつ、性生活も改善させましょう!
【この記事の筆者】
神戸三宮バッファローEDクリニック
院長 栗本浩行
- 現役内科医 (循環器内科)
- 平成26年 弘前大学卒業
- 令和4年 バッファローCL 開設
✓ 高血圧とEDの関係
✓ EDを増悪する血圧の薬と、EDを改善させる血圧の薬
✓ 主治医に最適な血圧の薬に変更してもらう方法
◆もくじ◆
1. 高血圧と勃起不全(ED)
高血圧とは
高血圧とは、血圧が高い状態のことをいいます。
具体的な数値は下記になります。
- 収縮期(最大)血圧:140mmHg 以上
- 拡張期(最小)血圧:90mmHg 以上
→片方もしくは両方満たす場合
日本の高血圧患者は、全体として約4,300万人いると推定されています。
日本人の3人に1人が高血圧です。
高血圧でEDのリスクは2倍に
勃起不全(ED)の有病率は、正常血圧の人と比較して、高血圧の人の方が2倍高いと言われています。
陰茎の血管の動脈硬化によりEDになるからです。
陰茎には細かい血管の集まりである陰茎海綿体が詰まっています。
性的興奮があると、神経の働きで陰茎海綿体内の細かい血管が拡張します。
拡張した血管に血液が充満することで、勃起した状態となります。
引用)Mr.Big SHOP HP
高血圧が長く続くと、血管の内側が傷ついてしまいます。
修復の過程で、血管が硬くなったり、狭くなったりします。
これが動脈硬化症といわれる現象で、血流が制限されてしまいます。
動脈硬化により、陰茎に流れる血液が減少します。
その結果、勃起の達成や勃起の維持が困難になります。
陰茎の血管は非常に細かい細かいため、動脈硬化の症状が出やすいです。
高血圧が重症化すれば、EDの症状も重症化します。
2. 高血圧治療薬(降圧薬)
高血圧治療薬(降圧薬)について
降圧薬には様々な種類があります。
薬それぞれに特徴の違いがあるからです。
個々の病態に応じて、医師は最適な降圧薬を選択します。
- カルシウム拮抗薬
- アムロジン(アムロジピン)
- アダラート(ニフェジピン)など
- アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
- オルメテック(オルメサルタン)
- ミカルディス(テルミサルタン)など
- アンギオテンシン変換酵素阻害薬
- レニベース(エナラプリル)
- タナトリル(イミダプリル)など
- 利尿薬
- フルイトラン(トリクロルメチアジド)
- ラシックス(フロセミド)など
- ベータ遮断薬
- アテノロール(テノーミン)
- メインテート(ビソプロロール)など
※ここに掲載している降圧薬はごく一部です。
性欲や性機能に悪影響を及ぼしうる高血圧治療薬
①利尿薬
利尿薬(フルイトランやラシックスなど)はEDの原因になりえます。
体内の亜鉛の量が減る可能性があるからです。
亜鉛はテストステロン(男性ホルモン)の原料です。
亜鉛が体内で不足すると、テストステロンが生成されません。
テストステロンが不足すると、EDが発症しやすくなります。
利尿薬はEDを引き起こす可能性があります。
②(一部の)ベータ遮断薬
一部のベータ遮断薬(インデラル)はEDの原因になりえます。
勃起に関与する神経伝達を弱める作用があるからです。
性的興奮の伝達がうまくいかず、陰茎の血管が十分に拡張できません。
インデラルといったベータ遮断薬はEDを引き起こす可能性があります。
性的副作用を起こしにくい高血圧治療薬
アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ミカルディスやオルメテックなど)は、性的副作用を起こしにくい薬です。
むしろ、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬がEDを改善したという報告もあります。
EDの症状がある場合、医師はアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬を優先して選択すべきと言えます。
血圧を下げ過ぎてEDになることもある
高血圧治療(降圧薬)で血圧が下がりすぎることでEDが発症することがあります。
動脈硬化が進行した血管を血液が通過するためには、ある一定の血圧(血液が流れる圧力)が必要だからです。
ギリシャ人の男性(31〜65歳)を対象にした研究結果ですが、
降圧薬を内服している人のED罹患率が40.4%であったのに対し、内服していない人のED罹患率は19.8%でした。
高血圧治療なし(No treatmet)の方が、高血圧治療あり(Monotherapy, Combination therapy)よりED率が低い
降圧薬が原因でEDが発症していると考えることができます。
動脈硬化によって陰茎への血流が低下している状況で、降圧薬で血圧が下がり、更に陰茎への血流が低下していまったことが原因と推測します。
3. ED治療薬
高血圧があっても安全にED治療薬を服用できる
ED治療薬により生じる血圧と心拍数の変化は僅かで、臨床的に問題ないことが証明されています。
複数の降圧薬を服用している場合でも、安全かつ効果にED治療薬を使用できることも証明されています。
引用)
ED治療薬が内服できない場合
①血圧が極めてコントロール不良
血圧が170/100mmHg以上の方や、90/50mmHg以下の方は、ED治療薬は服用できません。
②硝酸剤を使用している
ED治療薬と硝酸剤は絶対に一緒に使用できません。
過度な血圧を低下を引き起こす恐れがあるからです。
③(一部の)不整脈薬を内服している
アンカロンなどの一部の不整脈薬と一緒に服用することができません。
不整脈を誘発する恐れがあります。
不整脈を指摘されたことがある方はコチラを参照ください。
>>【医師執筆】不整脈を指摘された方、バイアグラ服用前に必ず読んで下さい
引用:医療総合サイト QLife
4. くすり以外で大切なこと
①生活習慣の改善
薬物療法だけでなく、食事療法や運動療法の併用が効果的です。
健康的な生活習慣は、血圧を下げ、性生活を改善する可能性があるからです。
- 禁煙
- 節酒
- 運動習慣
- 良質な睡眠
- バランスのよい食事
健康になることで、自分自身に自信をもつことができます。
健康な身体は異性に魅力的に映ることが多く、性生活が改善することもあります。
②かかりつけ医と良好な関係を築く
生活の質に重点を置いて、降圧薬の種類を選択すべきです。
高血圧があったとしても、満足いく性生活を諦める必要は無いからです。
最適な降圧薬を選択してもらうために、かかりつけ医に性生活に関して正直に話すことが重要です。
そうすれば、適切な治療を継続しつつ、性生活も問題も改善することができます。
- どんな薬を飲んでいるか
- これまでの血圧の経過
- いつから勃起不全の症状があるのか
- どんな状況で勃起不全を自覚するのか
- 過度なストレスを溜め込んでいないか
- 性欲はあるか
上記内容について自問自答し、かかりつけ医に伝えるようにしましょう。
降圧薬の種類を変更することにより、性機能が改善する可能性もあるからです。
5. まとめ
高血圧があっても、ED治療薬は安全かつ有効に使用することができます。
しかし、一部の高血圧治療薬(降圧薬)は勃起不全(ED)の原因になるので、注意が必要です。
かかりつけ医と良好な関係を築き、自分の性生活について話すことが重要です。
きっと、かかりつけ医はあなたに最適な降圧薬を選択してくれるでしょう。
とはいえ、一般病院で自分の性生活に関して相談することは、困難な場合があると思います。
神戸三宮バッファローEDクリニックは、ED治療に特化したクリニックです。
院長は現役の循環器内科医なので、かかりつけ医に相談しにくいことがあれば、是非当院にご連絡下さい。
性生活の改善のヒントが見つかるかもしれません。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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神戸三宮バッファローEDクリニック 院長